2023ジェンダー平等推進闘争!
職場の男女平等の実現を労使により進めることを確認し大綱妥結
自治労は、男女平等の推進を自治労運動のすべてに関わる課題として位置付け、春闘期を年間の運動サイクルのスタートとし、年間を通じて全単組で取り組みを進め、「労働組合の男女平等参画」、「職場の男女平等の実現」、「男女平等の法制度・社会環境の整備」の実現をめざしています。
市職は、「ジェンダー平等」(※)について、本部方針に基づき、政府、連合、自治労が男女平等の推進月間として集中的に取り組みを進めている6月を基軸に取り組んでいます。ジェンダー平等推進闘争として、当局に対して5月29日に要求書を提出し、7月14日回答を得ました。
※「ジェンダー平等」…先天的・身体的・生物学的に個体が持つ性別(セックス)に対し、ジェンダーは「社会的・文化的に形成された性別」のことを言い、男性ないし女性にとってふさわしいと考えられている役割・思考・行動・表象全般のこと。このジェンダーによる格差や偏見、差別を解消し、性的指向・性自認を尊重し、誰もが多様性を認め合い、互いに支え合うことがジェンダー平等です。
ワーク・ライフ・バランスの実現=課題解消に必要なこと
昇任試験の受験率や管理職の割合などにおいて、男女差は依然として開いており、継続したねばり強い取り組みが必要と考えています。また、性のあり方を原因とする差別や性別による役割分担に関する固定的な思い込みも依然として存在しています。「女性だからこうすべきだ」とか「男性だからこうあるべきだ」などと言った雰囲気が皆さんの職場にないでしょうか。こうした差別的な考え方や思い込みが、ワーク・ライフ・バランスの実現を阻害する要因となっています。
7月19日開催 第7回拡大闘争委員会 |
ジェンダー平等を推進し、職場からこのような思い込みをなくして、誰もが多様性を認め合い、互いに支え合うことのできる職場、社会の実現を目指します。すでに過多な時間外労働が生じている職場については、療養休暇者等が存在していることも多く、残された職員の負担を軽減するため、適切な人員配置が必要です。さらに、メンタルヘルス不調による療養休暇者の増加を防ぐため、職員の適性を活かせる職場への配置を行うよう申し入れました。また、パートナーシップに係る休暇や手当については、「実施可能な制度から検討していく」との回答を引き出しました。 加えて、ここ数年来のコロナ禍によるコミュニケーション不足が業務に影響を及ぼしている職場も散見されるため、労使により改善を図っていくことも確認し、7月19日拡大闘争委員会、格差是正闘争委員会で内容を確認した後、団体交渉に臨み、大綱妥結としました。
ジェンダーギャップ指数125位!?
ジェンダー平等は世界共通の目標であるSDGsの分野別の目標に掲げられており、持続可能な社会づくりに不可欠です。
2023年6月21日に世界経済フォーラム(WEF)が発表した「ジェンダーギャップ指数2023」(国別に男女格差を数値化したもの)によると、日本は調査対象となった世界146ヵ国中の125位と前年から9ランクダウン、順位は2006年の公表開始以来、最低となりました。分野別にみると、政治が世界最低クラスの138位で、男女格差が埋まっていないことが改めて示されました。上位を占める国ではジェンダー平等を推し進めてきた経過がありますが、日本はその間ジェンダー平等に対する対策が不十分であったと言わざるを得ません。
欧米を中心に性的指向や性自認を理由とした差別を禁止する法律の制定が進み、日本を除くG7の国では同性婚の合法化や結婚に準じた権利を認める法律が成立しています。日本でも地方自治体において、同性カップルを配偶者と同等の「パートナー」と認めるパートナーシップ制度が拡がっており、2023年1月時点で、少なくとも255の自治体で導入されています。一方では性的マイノリティの人々が、職場を含む社会の様々な場面で、偏見や差別にさらされ、ジェンダーハラスメントやSOGI(性的指向、性自認)ハラスメントが大きな課題となっています。
誰もが安心して働き続けられる人権が尊重される職場づくりをすすめ、誰も取り残されることのない社会、性のあり方によって不利益や差別を生じさせない社会の構築にむけて取り組みを進めます。
「ジェンダー平等」って何?講演会を開催!
6月21日、連合東京男女平等局長 佐々木珠さんを講師に招き、『「ジェンダー平等」って何?』というタイトルで講演していただきました。講演内容は次のとおりです。
女性を取り巻く法律制定を振り返ると、女性に選挙権が与えられたのは1945年のことでした。1925年に「男子普通選挙法」が制定され、25歳以上の男性に選挙権が与えられ、それから20年間は女性に選挙権はありませんでした。
1947年には労働基準法が制定され、この中で生理休暇が定められました。1985年には男女雇用機会均等法が制定されました。その頃の社会状況は、女性は結婚すれば退職することが普通である状況でした。2015年に女性活用推進法が制定されました。管理職に占める男女の割合などの公表が義務付けられ、女性が活躍する社会が期待されました。労働組合の観点から見ると、日本労働組合総連合(連合)は2004年から6月を男女平等月間として定め、女性活躍推進の機運を高めるための取り組みを行っています。2021年10月には連合に女性初の会長が誕生し、時を同じくして、それまでの「連合男女平等参画推進計画」を新たに「連合ジェンダー平等推進計画」として策定しました。
男女平等参画については数値目標が定められています。それは「202030」と「203050」です。「202030」は2003年に政府が定めた数値目標で、社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度にするという目標です。しかし、この目標は達成されず、その内容を2020年代の可能な限り早期に30%程度にすると言う内容に修正されました。また、「203050」は、連合が「ジェンダー平等推進計画」で掲げている目標です。世界の潮流は2015年に国連が提唱した、2030年までに意思決定の場に女性が50%参加することであり、このことにちなんでいる数字が「203050」です。社会に影響を与える法改正等の政策・制度課題に取り組むにあたっては、女性の参加率50%を意識することも重要であるとしています。
30%はクリティカル・マス=決定的多数の数値
なぜ女性参画の目標が30%なのか、これについては、30%が「クリティカル・マス(決定的多数)」の数値であり、30%は量的変化が質的変化に転じる境目となる数値であるということです。議会や政策に一定の変化をもたらすために必要な女性議員の割合は30%と言われています。それ以下の割合では、女性が連携を取りづらかったり、女性であることのデメリットを感じやすかったりすると言われています。また、女性が少ないと、女性自身が男性規範を身につけてしまいやすく、組織文化を変革することが難しいとされています。
「ジェンダー平等」を推進するために必要な事項として3点が示されました。それは「ワーク・ライフ・バランスの推進」、「健康で働き続けられる職場環境の整備」、「多様性を認め合い、偏見や差別解消に向けた取り組み」です。
「ワーク・ライフ・バランスの推進」を進めるためには、男性の育休取得率向上のための取り組みや長時間労働の是正、女性の昇任意欲の醸成が求められます。
職場で困っていることを組合役員に伝えて!
「健康で働き続けられる職場環境の整備」については。生理休暇をはじめとする特別休暇の有給化、更年期障害による心身の不調時に休むことのできる「健康休暇」の創設に向けた取り組み、そして、がん検診、婦人科検診等の各種健康診査の整備が求められます。
「多様性を認め合い、偏見や差別解消に向けた取り組み」については性的マイノリティである組合員が安心して働ける環境整備、各種ハラスメントの撲滅が必要です。
7月19日 団体交渉 |
講演の中で講師から「労働組合こそ、コミュニケーションを!」という提言がありました。男性も育児休業を取得する人が多くなり、一部の社員に負担がかかっているという声に対応するため、三井住友海上火災保険株式会社では、社員が育休を取得し残された社員に対し、少子化への対応として、会社全体で育児を支援する風土を醸成するため、育休を取得した社員の同僚に「育休職場応援手当」を支給しているという実例が紹介されました。また、育児休業などの制度を利用することは権利として認められているが、権利を行使する前提として、お互いの支えあいによって職場は成り立っているため、「感謝」の気持ちを忘れないでとの話がありました。組合としては、お互いに「思いやり」の気持ちを持てる職場が望まれること、組合は要求に現場の声を反映させることができて初めて、その真価を発揮するため、職場で困っていることを組合役員に伝えてほしいとの話しがありました。
男女平等を念頭に取り組みを進める!
ジェンダー平等については、男女平等と比較し理解しづらい面があると思います。受講者からも、ジェンダー平等と男女平等についてどのように考えたら良いかとの質問がありました。男女平等がまだまだ達成されていない状況の中、性的指向や性的自認を尊重し誰もが多様性を認め合うこと、このことをどのように整理すべきか理解しづらいとの質問内容です。講師からは、まず男女平等を念頭に進めてはどうか、LGBTQ+の方たちは職場ではなかなかカミングアウトしづらい状況が想像できる。男女平等が進み女性が働きやすい職場となれば誰もが働きやすい職場になるのではないか、と回答されました。